本記事では、昨年下旬に公開された下記特許庁の「審判の最新動向」より、実務において知っておきたいポイントを絞ってお伝えします。
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/seminar/document/chizaishihou-2024/jpo-doko_jp.pdf
拒絶査定不服審判について
2023年の出願審査請求件数が230,184件のところ、同年の拒絶査定不服審判は21,047件に対して請求されており、審査対象案件の約1割程度が審判に進んでいる状況となっています。拒絶査定不服審判の請求成立率(特許になる率)は高く、2023年は78.0%でした。権利化を特に希望する特許出願に絞って審判請求されている結果、高い確率で特許権利化できているという傾向があると思われます。
前置審査を経て審判部に移管された件数は、1万件強であり全体の審判請求件数の約半数となっています。つまり、審判請求された案件のうち約半数は、前置審査で権利化されている状況となっています。
特許の異議申立てについて
2015年4月1日以降の特許公報発行分から対象となった異議申立について、2023年度の請求件数は、やや増加して1411件でした。2015年~2023年までに最終処分がされた異議申立てのうち、特許権が維持されたものは88.0%と高く、このうち訂正があったものが50.5%と過半数を占めています。特許異議申立ては、IPC分類で化学系に関する申立てが多い一方、物理系や電子系の特許に対する申立ては少なく、技術分野によって活用の有無が分かれる傾向がみられます。
無効審判について
特許異議申立ての開始以降、特許の無効審判の請求件数は減少傾向であり、2023年の請求件数は84件でした。審理結果のうち、無効審決の割合は13%、有効審決のうち訂正があったものの割合は約24%となっています。また無効審判を含む当事者系の審判(訂正審判を含む)は、2023年の審判件数231件中50件という比較的高い確率で高裁に出訴がされています。