米国への出願ルートには以下の4つの方法がある。
- 非仮出願(nonprovisional application)
- 国際出願(international application)
- 日本語非仮出願(Japanese language nonprovisional application)
- 仮出願(provisional application)
① 非仮出願
英語による非仮特許出願(nonprovisional application)は,英語による出願書類を作成し,米国特許商標庁に提出する。このとき,日本で特許出願がされていれば,パリ条約に基づく優先権を主張することができる。このため,「パリ優先権による出願」,または「パリルート」ということもある。
② 国際出願
国際出願とは,特許協力条約(Patent Cooperation Treaty,いわゆるPCT)に基づく出願をいう。例えば,日本,米国等の多数国に同時に出願をしたことと同じ扱いとなる。日本国特許庁に対して,日本語で作成した1つの国際出願を行うことにより,多数の国に同時に出願したとみなされる。また、国際出願をすると,明細書等の翻訳文の提出,および各指定国での手数料の支払い(指定国への移行手続)を優先日から30月まで遅らせることができる。
③ 日本語非仮出願
日本語非仮出願とは,日本語の明細書を添付して米国特許商標庁に提出する非仮出願である(規則1.52(d))。日本語による米国特許出願が受理されると,米国特許商標庁から翻訳文の提出指令が出され,指定期間内に翻訳文を提出しなければならない。翻訳文を提出しなければ,出願が放棄されたものとみなされる(規則1.52(d)(1))。
④ 仮出願
仮出願(provisional application)とは,通常の特許出願の要件を満たさない簡易な形式による出願をいう (111条(b))。仮出願をすれば,発明は完成したものの,クレームや明細書を整備する時間がない場合などに,出願日を確保して他人の出願に対して優位に立つことができる。旧法では米国は先発明主義を採用しており,発明日の立証は難しかったため,実際には米国における出願日が早いほうが有利とされていた。その結果として、旧法下では仮出願が頻繁に利用されていた。仮出願をするときは、明細書および図面のみあれば足り,クレームは必要なく,また発明者宣誓書や譲渡証も必要ない。仮出願は日本語でも出願できる(規則1.52(d))。