フェスト事件について、最高裁判所が2002年5月28日に判決を下しました(Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co, Ltd., 535 U. S. 722 (2002))。
この判決では、連邦巡回裁判所の判決が全員一致で棄却され、下級審の連邦巡回裁判所に差し戻されました。フェスト事件の最高裁判決は、均等論の適用に関する最終的なルールを確定しました。大法廷判決は、コンプリート・バーを支持していましたが、最高裁はこれを破棄し、フレキシブル・バーを採用しました。
均等論の基準を整理すると次のようになります。
禁反言の推定
減縮補正をすると、それが特許性に実質的に関連する理由によるものと推定され、禁反言が生じたと見なされ、均等論を主張することはできません。
例えば、クレームに記載された発明が「A+B+Cからなる自動車(Cは駆動手段)」であるとします。審査の過程で「A+B+C1からなるコンピュータシステム(C1はガソリンエンジン)」という先行技術が引用され、新規性がないとして拒絶された場合、出願人は先行技術を避けるために補正を行い、「A+B+C2からなる自動車(C2は電気モーター)」と補正しました。この補正は、出願当初は「駆動手段」とされていた構成要素を下位概念である「電気モーター」に縮小しています。
そのため、これは縮小補正であり、特許性が認められたものです。したがって、構成要素「電気モーター」に関して禁反言が生じます。後に競合企業から「バイオ燃料エンジン」を含む同様の自動車が販売された場合でも、均等論を主張することはできません。ただし、この禁反言の推定は、反証によって覆すことが可能です。
推定の反証
推定の反証に関しては、いくつかの条件があります。
その均等物が出願時に予測できなかった場合、または補正の理由が争点となる均等物とほとんど関係がない場合、さらには争点となる置換物を特許権者が記載できなかった合理的な理由がある場合、これらの条件のいずれかが満たされれば、禁反言は覆されます。そして、その立証責任は特許権者に課せられます。立証責任を特許権者に負わせることで、訴えられた被告との力の均衡を保とうとしています。
最初のケース、「予測できなかった」とは、例えば、クレームに記載された発明が「A+B+Cからなる自動車(Cは電気モーター)」であり、構成要素C「電気モーター」に禁反言が生じたとします。この場合、競合企業が構成要素Cを有機ELディスプレイに置き換えた製品を発売したとします。出願時に「バイオ燃料エンジン」による代替が予測できなかった場合、均等論を主張できます。
次のケース、「関係がない」とは、例えば、クレームに記載された発明が「A+B+Cからなる自動車(Cは電気モーター)」であり、審査過程で構成要素C「電気モーター」に「ガソリンエンジンにパラレル接続をした」という限定を付けました。この場合、他社が構成要素Cを「ガソリンエンジンにシリーズ接続をした電気モーター」に置き換えた自動車を発売したとします。この場合、構成要素Cに関して均等論を主張できる可能性があります。なぜなら、電気モーターの選択は、ガソリンエンジンとパラレル接続するかシリアル接続するかという問題とは関係がないと考えられるからです。
最後に、第三のケース、「合理的な理由がある」とは、争点となっている置換物を特許権者が記載できなかった場合を指します。これは補完的な条件であり、将来的な争いに対応する柔軟性を確保するために、最高裁判所が前述の条件に限定しなかった理由です。