出版社:中央経済社
ヨーロッパにおける特許申請手段として中心的役割をはたすのがヨーロッパ特許条約であるが、各国ごとへの出願より効率的なためその利用が急速に増えている。申請手続きのポイントを詳述。
高岡亮一[著] 発行日:2005/10/07
A5判/308ページ
ISBN:4-502-93580-8
前書きからの抜粋
「 本書は,欧州特許条約(CONVENTION ON THE GRANT OF EUROPEAN PATENTS (EUROPEAN PATENT CONVENTION))の実務書であり、拙著「アメリカ特許法実務ハンドブック」の姉妹版にあたる。
「アメリカ特許法実務ハンドブック」は、知的財産の現場で活躍される実務家の方々を対象として、実務家が必要としている情報を分かり易く平易に提供することをコンセプトとして執筆し、版を重ね、広く読者に受け入れられたものと思っている。本書は同じコンセプトに基づいて書かれている。
近年、ヨーロッパは、経済的な統合を中心に発展してきた欧州共同体を基礎に、欧州連合条約(マーストリヒト条約)に従い、経済通貨統合を成し遂げ、一大経済圏としてその存在感を急速に増している。そして、知的財産の分野では、ヨーロッパは、米国、日本と並び三極と称され、きわめて重要な位置を占めており、知財の現場では欧州特許を取得するニーズは高まるばかりである。
しかしながら、欧州特許条約に関する実務書の数はきわめて少なく、整理された体系的な情報も十分に提供されていない。欧州特許条約の実務は、アメリカや日本の特許法の実務とは、根本的に異なる。欧州特許条約は、異なる文化圏で異なる歴史的背景を経て発展したものであり、日本の特許実務家にとっては、依然としてベールに包まれた「未知の巨人」である。本書はそのような知財の現場のニーズに応えるべく、冗長な法律解釈論をあえて避け、実務情報に焦点を合わせ、平易な文章で執筆した。
なお、本書の執筆を始めたのは、2002年頃であったが、2003年末に審査基準(GUIDELINES FOR EXAMINATION IN THE EUROPEAN PATENT OFFICE)は大改訂を受けた。改訂内容を見ると、相当な大変更が含まれており、執筆は難航し、結果として完成は2005年までずれ込んでしまった。が、既存の学術書や論文が旧審査基準をベースにしているゆえ、苦労の結果本書の価値は逆に高まったものと信じる。
さらに、本書では難解・難読の審査基準に躊躇せず果敢に切り込んでいったつもりである。難解な基準を噛み砕き、平易な文章でアウトプットした。これまであまり語られることがなかった、あるいは知ることができなかった欧州特許出願のプロセキューションに関するテクニックを随所に発見できることと思う。
ボリュームとしては拙著「アメリカ特許法実務ハンドブック」よりも少ないが、情報の希少性と特許取得のニーズの高さからみて、本書の方が利用価値が高いと思う。」