2003年 日経BP・BizTech図書賞
発行元 : 日経BP社
内容紹介
先端技術開発をめぐって巨額マネーが飛び交うアメリカ特許市場。その存立基盤を150年にわたって支え、ときに凶暴なまでの影響力を発揮してきた異端の法理「均等論」の正当性を真っ向から争った特許侵害訴訟「フェスト社VS焼結金属鉱業事件」への密着取材。複雑な特許制度の仕組みと実務を平易な文章で明快に解説してあるので、ビジネスマンのための特許入門書としても最適。
高岡亮一 著
四六判 /352ページ
ISBN : 4-8222-4312-5
前書きからの抜粋
「世界中で特許紛争が頻発する昨今、フェスト事件ほど大きなインパクトを与えた特許紛争は過去にはなかったように思う。フェスト事件は現存する百二十万件のアメリカ特許の価値を著しく変動させ、特許を巡る企業の勢力地図を塗り替えてしまった。フェスト事件が社会的に注目された二〇〇〇年から二〇〇二年にかけて、弁理士はフェスト事件についてのニュースレターを号外のように配りまくり、講演やワークショップを盛んに行った。フェスト事件はビジネス特許ブームに代わって業界の主役となり、「フェスト」は業界の流行語となった。
フェスト事件の争点は「均等論」である。均等論は近寄りがたい特許法の奥義と思われているようだが、実際は専門家ではなくても理解できる比較的明快な法理である。均等論は発明者を悪意のコピイストから守る最後の砦でありながら、特許制度の安定を揺るがす悪魔の顔を持つ。均等論は一五〇年にわたってアメリカの特許制度の中で脈々と継承されてきた。均等論を知らずして、特許戦略を語ることはできない。
本書での私の試みは、十四年もわたるフェスト事件の経過を追いながら、均等論の善悪の二面性を浮かび上がらせることである。そして、フェスト事件の騒動の中で人々がいったい何を失い、何を得たのか、を明らかにすることである。さらに、アメリカ最高裁判所が示した均等論についてファイナル・ルールを整理することにある。
本書は、また特許制度の「入門書」を意識して執筆した。フェスト事件という熾烈な特許紛争の経過を辿りながら、最後まで読めば、アメリカの特許制度の特徴も理解できるように配慮した。特許の専門家だけではなく、一般のビジネスマンにも十分に読み通すことができるものと思う。特許の専門用語には適宜説明を挿入し、巻末にも用語集を設けた。」